USD6,000を突破したと報じられているビットコインですが、ジンバブエでは全く異なったレートで取引されているようです。アフリカの仮想通貨取引所golixでのビットコインレートはUSD 9,125(2017年10月22日現在)になっており、標準のレートとは大きく異なっています。(BitfinexのレートではビットコインレートはUSD 5,840)
なぜこのようなズレが生じているのでしょうか?これはジンバブエの通貨事情と大きく関わっています。
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ジンバブエで高騰するビットコイン
現地のトレーダーによると、ビットコインは個人の投資目的ではなく、ビジネス上で支払いのために使用される目的で購入されるようです。USD 9,125と表示されていますが、多くの人はLocalBitcoins上で世界標準価格で購入しています。一部の人々が国の首都でUSD 10,000近い価格で購入しているようです。
ジンバブエは過去数年間、通貨のハイパーインフレによって国家の財政が危機に瀕したために、通貨そのものに対する信用が低く、財政も不安定です。そのためビットコインという世界共通の通貨が受け入れられているようです。
ジンバブエの歴史について
ここで少しジンバブエの歴史について触れておきます。
そもそもジンバブエのハイパーインフレは、独裁政権のムガベ大統領が農地接収法を施行したことに起因します。これにより農業が崩壊、輸出が激減し10年近い景気後退を招きました。この財政赤字を埋めあわせるために、中央銀行が政府の要請に応じて紙幣を印刷し続けました。その結果として2008年に5000億%ものインフレに陥りました。そして2009年にほぼ無価値になってしまった自国の紙幣を廃止し、USDなどの通貨を使うことを決定しました。
一時的に安定を取り戻したジンバブエでしたが、USDを国内で発行できないため、USDを輸入せざるをえませんでした。しかし、USDの供給量が国内の需要量に追いつかず、銀行口座に残高があったとしても実際に引き出せるのはUSD 20ほどといった状態に陥ってしまいます。銀行はこの事態を解消するため、ドルと同価値を持つ債券の発行をはじめました。
しかしこの方法も債券での支払い拒否等の問題が生じています。結果的に、人々は支払い手段としてのキャッシュを持てなくなります。あるジンバブエの経済学者はこの事態を「以前は店に商品がなかったが、今は商品があっても買うお金がない」と表現しています。一向に安定しない国内の通貨事情に対して、人々は法定通貨よりもビットコインにシフトし始めており、それが今回のビットコインの急騰につながったようです。
おわりに
財政が不安定な国の方が仮想通貨が広がりやすい典型的な例ですね。キプロスの危機の際もビットコインが広がるきっかけになりました。まだまだヨーロッパやアフリカでは財政的に不安定な国々があり、今後も人々は仮想通貨に流れていくと思われます。
先進国での規制とは離れた場所で、独自の発展を遂げていくかもしれませんね。